向井メンタルクリニック

メンタルヘルス徒然草

2011/8/20 土曜日

「あんたのパンツいつまで洗うの」?!

「あんたのパンツいつまで洗うの」?!強がって息子の前では、そう言ってはいたが、いざ息子が家を出ていってしまうと、寂しさが一気にこみ上げてきた。そしてなぜか無性に腹が立った。泣いた。涙は熱かった。
子供が小さい頃、主人が逝った。女手ひとつで、ここまで育てた。「子供のため、子供のため」だけを考えてきた。苦労もあった、大学も卒業させ、一流会社に入社、とにかく一人前に、一人前に、と思ってがんばってきた。いざ一人前になって就職で社会人、親元を離れてのお勤め、もう息子のパンツは洗えない。
・・・・・・しかも、これからは息子のパンツは彼女が洗うらしい!!フム!!!
何か気が抜けた。息子がいるときは「暑苦しいな」と思っていたが、いざいなくなると、一人きりのマンション、仕事で疲れて帰って「ただいま~」パチリと自分で部屋の電気をつける。家の中の空気の温度が下がってしまった。

本当に、鳥の雛が飛び立った後の「空の巣」・・・・・・・とりあえず、さびしい。

 ここで、男の下着を洗ってくれる女性の話をいくつか。

昔話の「鬼のふんどしを洗う女」

  あるとき、仲のよい男と女がいた。そこへ、鬼がやってきて、男を痛めつけた挙句、女をさらっていった。何とか助け出さねば。男は女を取り返すため鍛えた。空手、柔道、・・・・鍛え、鍛え、鍛え上げた。そして鬼の下へ・・・・。なんとさらわれた女は、のんびりと川で鬼のふんどしを洗っていた。女いわく、「だって仕方がないじゃない、いまさら」。女性の「環境適応性のよさ」の話か。

坂口安吾の小説に出てくる「青鬼の褌(ふんどし)を洗う女」

   堕落じゃなく、この人は「自由奔放・変幻自在に生きる女」でしょう。

 よしこさん、この10何年、「お母さん よしこ」として一人でがんばってきました。ご苦労様! また、旧姓の「××よしこ」に戻りましょうか。
男の下着を洗う女性は、「環境適応性」がよいのであります。そして「自由奔放・変幻自在に生きる女」であるのですから。

 

 

 

 

 

 

 

2011/1/25 火曜日

成功という憂鬱

  ・・・・・・・・と言うことで彼は成功した。いわゆる勝ち組である。 

30歳有余にして数件の店舗を傘下に、年商数億、経済的にも、時間的にも余裕ができた。 

そして、彼は憂鬱なのである。学校を卒業して、働いた、がんばった、お金がほしかった、第一号店、必死作り上げた、夢の中のよう、、第二号店、おもしろかった、ワクワクした、お店にあれをしよう、これをしよう・・・・、第三号店、なんとなくうまくいってしまった。ついで、その他の店舗、スラスラ、サクサク・・・・これもなんとなく、うまくいってしまった。第二号店までのような充実感、わくわく感はなかった。 

ある時、チョッと疲れ、仕事の休養をとった、「アッレ~、おかしいな~」 自分がいなくても、この会社は、成り立って進んでゆくのである。あれだけ全身全霊打ち込んで、精魂、心を込めた会社、「自分の会社」であるのに。 

あれだけほしかったお金、自由になっていくらでも使えるようになると使ってみても面白くない、忙しいとき、時間を創って、散財してやろうと思っていたのに、してみれば何のことはない。パチンコ何万円も使ってみた。何のことはない、面白くない。面倒くさいだけ。 

  忙しいとき皆によく言われた「生き急いででいるんじゃないか」。最近その言葉がよく心に戻ってくる。 

1年間休もうと思っていたけど、最近、心して頑張ってみてるんですよ、店回りもまた始めました。調子いいですよ。ちょっと食べすぎです。 

 うつ病に励ましは禁物というが患者さん、あるいは時期次第である。仕事楽しみや、君の生きがい、趣味、楽しみやね。もっと会社大きいしいや。 

フッと、この歌詞を思い出した。心理学的、精神病理学的には、ちょっと違うかな、 

      「 If I could wish for somethig 」 

            望みはなにかと聞かれたならば 

            幸せ、と答えはするが 

            望みが叶って幸せになったなら 

           すぐに昔が恋しくなるだろう 

           あんなに素晴らしく不幸だった昔が 

                映画「愛の嵐:The night porter」      映画見たらやっぱりチョットちがうな~~。 

 ご本人の了解をいただいたうえ、ご本人と同定できない程度に改変してあります。

2010/5/3 月曜日

男と女 Un Homme et Une Femme No4「人生の主人公」

まもなく結婚という段階に来てよし子さん(仮名)は元気が出ない。周囲の人たちから見れば、この才女が寿退社に当たってどうして「うつ」になるのだろうと、理由がわからないであろう。すばらしい資格に素敵なご主人。
こんな場合、チョッと精神医学をかじった人なら「婚約期うつ病」という言葉を連想するであろう。
この人と一生うまくやっていけるのだろうか?幸せにしてあげれるのであろうか?さては子供ができたら立派に育てられるのだろうか?いっぱいの将来への不安、婚約期うつ病の人たちの心の動きといわれてきた。
でも、よし子さんはどうもこの精神療法に乗ってこない。なかなか手ごわい。かなりの時間を割いて彼女と話し合った。
彼女のご両親の話になった。母はずっと家にいた、専業主婦である。彼女の父である、ご主人にしばしば「いったい誰に食わしてもらっているんだ!」としばしば言われているのを横で聞いてきた。そんな母のようには、なりたくない。彼女はがんばった。勉強した、資格を取った、営々と築き上げてきた信用、キャリアー・・・・・とにかくがんばってきた。そんな折、彼と知り合い将来を誓った。これでよいのか?母が父に言われた言葉がフッと心をよぎった。「いったい誰に食わしてもらっているんだ!」いったい今までの苦労は何だったのだろうか。
結婚することで、自分は「人生の主人公でなくなった」ように思えて仕方がない。このままでよいのか?結婚しても人生の主人公でいられるのか。
  「まあ、しばらく主婦でもしますわ」 ニッと、 笑って、彼女は転居のため当院を卒業して行った。

当然、この話はご本人の了解をいただいた上で、ご本人とわからない程度に変更してある。

2008/7/7 月曜日

新型5月病:「私、現役で大学通ってしまいました!」

Filed under: 6.うつ病について, 8.心療内科よもやま話 — mukai @ 10:31:07

この6月にも多くの患者さんが新しくお見えになった。世の中はこんなに複雑で、ストレスが多くて、困ったものなのか?本来、「心の医者」などなくてもよい世の中がよいのだろうと思う。
以前より「5月病」(Wikipedia)なる言葉があり、主に「新入社員、新入学生が・・・・・」、とされてきた、もともと、がんばって入学した後、入学という目標を失うといったところから来た言葉という。どうも新しく「6月病」形容してよいような一群の新入社員の人々がおられるような気がする。新型インフルエンザならぬ、新型「5月病」である。
6月といえば、本年4月入社で研修を受け、実働しはじめ本来の仕事が始まった矢先である。さらりと表面的なお話だけを聞くと「5月病」と変わりはないようだが、じっくりとこの人たちの話を聞いてみると、従来の「5月病」と呼ばれる人たちとは異なる共通項が見えてくる。
 
「気分が沈んで仕方がありません、会社にゆくのが怖いのです、夜うまく眠れないのです・・・・」。この程度まで聞くと、いわゆるストレス関連障害、適応障害の抑うつ型・・・がんばりすぎているのだ、と診断してしまうだろう。ちょっと休息でもとってみることをお薦めしてしまいそうである。
ところが、さらに状況を聞き進んでゆくと、「上司にしかられました、私は嫌われているのでしょうか?」「職場にうまく溶け込めないのです」とおっしゃる。
どうも違う? もっともっと聞いてゆくと、これらの多くの人たちには、やや従来の「5月病」とは異なる精神病理が存在するように思える。
この人たちは、一流大学卒で一流会社のエリート候補である。小さいときから英才教育を受け、学校の先生、両親にさえしかられたことがないという、ましてや他人にしかられたことなどない。限られた英才たちの間だけで、褒められることだけを経験してきたという。テストの成績は当然上位である。「答えの存在する問題」を解き、しかも的確にすばやく答えを出すことを訓練されてきた。「答えの存在しない問題」はない世界である。
そのような訓練を受けてきた人たちが、上司にしかられ、実社会に出て「答えの存在しない問題」に遭遇すると混乱をきたす。仕事、人間関係・・・世の中には、「答えの存在する問題」のほうが少ないということに面食らい、それが理解できないように思える。
イタシカタなし、精神療法的にじっくりとお話を伺い、世の中は、全く正しい答え、正解が存在しないほうが多いのであって・・・・などと、高校生に話したなら「オジサンぶって、ウザイ!」としかられそうなお話をする。さすがに、この人たち世の中で「少しもまれたせいもあるのか」しっかりと聞いてくれる。叱られるのも「君が期待されているから、トレイニングしてもらっているのではないか?」と疑問をぶつけてみるとさすがに頭のよい人たち「わかりました!!」と意気揚々となり、数回で、当院を卒業してくれる方が多い。
 この人たちと話をしながら、昔、私が某大学で教職にあったころに知り合った医学部の学生さんのこと思い出した。すなおで、よい子である彼女は医学部の学生でも、上位に属する人であった。つまりエリートである。
あるとき、私が別の教員と「浪人も別に悪いものではないですね、いろいろと人生を考えてみるチャンスであったようにおもいますね。この年になってわかるようになりました」「うん!僕もそう思うよ!」「お互い、大学に入るのに、数年苦労したモンネ!」などと、半分自嘲の意味もこめて話していた。
横で聞いていた彼女が、「先生! えらいことをしてしまいました! 私、大学を現役で通ってしまいました!!」と真剣な表情で困っている顔がフッと、私のこころをよぎった。
彼女は「技術的にはよい医者」になるだろう。ただ「心の医者」には、向くかな? あるいはできるのか?などと、あの「真剣な表情」を思い出しながら、彼女の歩んできた、そしてこれから歩む、であろう医者としての人生を思う。
 

 

2008/2/13 水曜日

6.うつ病になりやすい性格傾向:「努力してさぼります」話

古典的な意味での「うつ病」患者さんは独特の性格傾向がある。確かに日常うつ病患者さんと接しているとしばしば感じる。 

  とにかく、まじめ!!!、几帳面、熱中性、仕事熱心、凝り性、正義感などが 1930年代に、下田という人によって指摘されていて、全くその通りである。少し遅れてドイツでもテレンバッハという人が同様の性格傾向 として 「メランコリー親和型」ということを唱えた。ドイツ人と日本人のメンタリティーはよく似ているのであろうか、その他の国ではあまりこのような研究はない。さらにもうひとつ、「対他的配慮」つまり自分の周囲の人に対して細やかな気遣いをする、ということを笠原先生という人が唱えている。 

 Aさんは典型的な「うつ病」の方である。まじめ一方、仕事が趣味のような方、人から仕事を頼まれると断れない、一度始めた仕事は徹底的にしないと気がすまない。仕事は120%する。つまり頼んだ相手の期待以上の仕事をしてくる。そんな、こんなで社会的評価は高い、このため「あの人に任せておけば・・・・」というのですぐにみんなに頼られる。「対他的配慮」があるので仕事を頼まれると断れない。結局、がんばりすぎてへばって当院へやってきた。  

 多くの場合、このタイプのうつ病の方は、比較的薬物療法がよく効く、1-2週間でかなりよくなったので、再発防止の意味で「うつ病の方の性格傾向」の話をした。社会的には十分過ぎるくらいがんばっているので、あまりがんばりすぎず、仕事も適当に手を抜くように説明した。 

 生真面目なAさん曰く、「努力してさぼります」・・・・とのこと、「ウームどうもわかっていないようだな~」、致し方なし。 

 「Geduld, Geduld, immer wieder Geduld: ドイツ語:辛抱、辛抱もう一回辛抱:私が心の医者になって最初に習ったドイツ語:患者さんがどうもわかってくれていないようでも辛抱しなさいというこころ医者への格言」を、心の中で唱えながら、さらに丁寧にもう一度「うつ病の方の性格傾向」の話をし、、「努力してさぼります」は、「なんか変ですね」と水をむけると、やっと気がついたのか、二人で大笑い。 

 最近やっと自分のペースをつかめてきたとのことである。 

 

2008/2/2 土曜日

「仮面うつ病」:さまよえるドクターショッピング

Filed under: 1.診断の重要性について, 6.うつ病について — mukai @ 15:15:25

  うつ病について、比較的一般の方もご存知の言葉に「仮面うつ病」があります。うつ病の人は表情が出なくなるので「仮面」のようになるので「仮面うつ病」だとか、誤解されている方が多いように見受けます。

 「仮面うつ病」とは英語の「masked(仮面された) depression(うつ病)」の直訳です。本来の意味はカナダのクレイルという人が言い始めた言葉で、例えば先の述べた、胃腸症状、「頭痛」「めまい」「心臓がドキドキ」「呼吸が荒くなる」といったなどのいわゆる「自律神経失調症」と呼ばれるような種々の身体症状が目立ってしまい、「抑うつ症状」、「やる気が出ない」、「うっとうしい」「悲しい」などのこころの症状が前面に出てこない、つまり身体症状にmasked:仮面された、あるいは隠されたといえばよいのでしょうか、そのような身体症状の奥に「マスクされたうつ病」の症状がみられるうつ病のことを「仮面うつ病」と呼びます。

 この方たちは不幸にもこの身体症状のために、たくさんの病院を訪れては、体の検査をいっぱい受けて廻っては問題ないといわれ、いわゆる「ドクターショッピング」を行い、さまよったあげく最後にメンタルな面を指摘されわれわれのもとにこられます。

 ただし、逆にこれは気をつけないと、うつ病のように思われていた症状が、実は身体に関する病気がもとであったということがありますので注意が必要です。

 

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