逆説志向No2:強迫性障害の精神療法 確認、確認、・・・・・

ヨシオ(仮名)さんは小荷物の分類、配達の業務をしてもう何年にもなる、ベテランである。約1年前にチョッとしたトラブルを同僚がしてしまった。担当ということで、たいして関係ないが、彼が上司と一緒にお詫びに行った。

元来まじめで、几帳面な ヨシオ(仮名)さんは、それ以来、自分が間違えて配達したのではないか、気になって仕方がない、自分に自信がなく、分類するのに、ばかばかしいとは思うが4~5回も確認を繰り返してしまい、自分でもたまらない、確認、確認に明け暮れて一日が過ぎてしまう。次第に、家から出かけるときにも「戸締りは? ガス栓は? クーラーは? 水道は?・・・確認が止まらない。何回も繰り返すため、時間がかかって外出できず会社に遅れそうになったことがしばしばである。こんなことなら一度心療内科にでも、というので当院にやってこられた。

「自信喪失性強迫性障害」と診断した。強迫性障害でも種々あるのである。

このタイプの人には「逆説志向:ギャクセツ シコウ」がよく効く。さっそく

「強迫性障害を恐怖し予期不安におびえて、不安から逃れることに腐心し、は強迫に対して不安を強め、強迫観念を抑えつけようとたたかうのであり、不安から逃れようとすればするほど、強迫に逆らえば逆らうほどかえって不安や強迫は強化さる」症状は悪化することを説明。「これに対して、逆の方向に志向しようと努める。・・・もっと不安にもっと強迫的になろうとする。」と楽になると下記の図を見てもらいながら説明した。

症状:(強迫性障害:確認・・・・・・)

↓                                      ↑

変な風に見られる、格好が悪い、人に見せたくない       ↑

↓                                      ↑

隠そうとする、やめようとする                     ↑

↓                                      ↑

また、症状が出るのではないか。(期待不安):不安の増強  ↑

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期待不安がキーワード

治療と経過

「もっと自信を持って、確認するように徹底的に!!確認は最低5回はするように」と指導した。このように非常に逆説的であるので、半信半疑であったが、根がまじめな彼は試してくれた。少量のお薬も使用しながら。

1週後(受診2回目):チョッと楽になってきている、相変わらず確認はしているが「マァ~、シャーないな」と思うと確認回数は減ってきたとのこと。「ちょっと自信ができてきた」とのこと、ここで、当院ブログの「強迫性障害とfail safe」の話を読んでもらうよう話した。

3週後(受診3回目):調子のよい瞬間が増えてきているのがわかる。配達も15階あれば5階まではそんなに確認せずに済んでいる。

5週後(受診4回目)家を出るときの確認が減ってきている。戸締りを5回も確認するのは無駄だと思うようになってきている。お薬は約半分にする。

2月後(受診6回目)「ヤァ~久しぶり」「マアいいか~」「大丈夫だな~」「楽になった」・・・

当院「卒業」に向けてお薬は減量中である。主治医としては、うれしい様な、ちょっとさびしい様な・・・これが本来の医者の任務であります。

この話は、「僕のように楽にる人が知るならば、ブログに書いてもいいよ」と、ご本人の了解を頂いて書いている。ありがたい話であります。先日、見えた時に「まだ載せてないの?楽しみにしてるのに・・」と言ってくれた。ただご本人に迷惑がかからないよう、本人が特定できない程度に変えてある。