向井メンタルクリニック

メンタルヘルス徒然草

2015/5/1 金曜日

行路者 2

Filed under: 1.診断の重要性について — mukai @ 14:53:35

やっぱり、前回同様、「こうろしゃ」とよむ。いわゆる、「行き倒れの人」のことである。

ある病院に勤務していた時、中年のおじさんが運び込まれてきた。今回はアルコールせん妄、わかりやすくイメージするには酔っぱらって、興奮しているのがながびいているような状態を想像していただくと良い。チャンと治療して、うまく冷めてくれれば良いが、かなりの人はそのまま認知症になる。アルコール依存症の人たちに、時に見られる状態である。

この人は、このせん妄状態が長引いて、なかなか醒めてくれず、認知症になってしまうのではないか心配した。遷延性せん妄と言って長引けば長引くほど、認知症への移行することが多い。この間この人のお名前、住所、ご家族全く分からずどうしたものかと心配した。1〜2ヶ月も続いたであろうか?やっとこさ、醒めてきた。

この人が、きっちり醒める少し前に大学人事で、私は別の病院に転勤していたので、後は別の医師が担当していた。この先生と久しぶりにお会いすることがあって、気に掛かっていたこの「アルコールせん妄」の人のことを聞いてみた。

私が転勤後もしばらくは、軽度のせん妄状態が続いた。後やっと、ご自分の氏名、住所、家族などについて話してくれたとのことである。

ナントナント、この人は大阪でも有数の名家のご出身。ご家族は大阪でも有数の繁華街に、いくつものビルをお持ちのかただったそうである。

「エ〜エ〜、あのビルも、このビルも、あの人のビルですか?」というほどの方だった。繁華街に疎い私でも、聞けばわかるほどの有名なビル。

何故そんな人が、「行路者  」「アルコール依存症」か?そこには複雑なご家庭の事情があったという。

「人生いろいろ」精神科医療は小説より「いろいろ」である。

2015/4/20 月曜日

行路者No1

Filed under: 1.診断の重要性について — mukai @ 14:38:49

「こうろしゃ」とよむ。いわゆる、行き倒れの人のことである。

最近高齢の方の行方不明が問題になっている。

ある精神科の病院にいた時のこと、中年のおじさんが運び込まれてきた。この人、道で頭から血を流して倒れているところを救急病院に搬送されてきた。どうも喧嘩をしたらしい。一応の検査、治療は行われたが、身元を示すもの何も持っていない、さらには意識はあるのだが、何も話さない。このため身元もわからず、家族にも連絡が取れない。精神疾患が疑われ搬送されてきた。

早速に診察を行う、世間話などはするが、なかなか氏名住所など、ご自身のことについては話さない。別に、幻聴や妄想めいたことを言うこともない。「全生活史健忘」一般的な言葉でいう記憶喪失などを考え様子を見ていた。

鍵のかかる病院にも関わらず、特に驚いたり、嫌がる様子もなくなんとなく、入院生活を送る。そんなこんなで一月も過ぎた頃、次第に馬鹿話にも乗ってくるようになり、ポロリと身の上話をし始めた。氏名 は ⚪️田×男であり、住所も話してくれた。良かった良かったと、早速にその住所に住むという ⚪️田×男のご家族に連絡した。

しばらくして、ナントナント!!   ⚪️田×男氏「ご本人」から連絡があり、入院中の人物は ⚪️田×男氏とは全く関係なく、心当たりもない。なぜそういうことが言われるか分からず、ご立腹であると連絡があった。

結局、私がこの病院に在籍している間には、この人 ⚪️田×男氏で通した。この先はどうなったかは不明である。

この話を、大先輩の精神科の先生に話していたら、「そんな話、ようある」と言われた。他人の人生を借りたくなるほどに、人にはいろいろあるのである。

特に大阪のような大都会では、種々の事情で身分を明確にしたくない人が多いという。小説のネタのような事が精神医学の臨床には多いのである。

他人の人生を名乗ってしまわざるを得ない、この人の、歩んできた人生に思いをはせる。

2015/3/11 水曜日

薬は本当に必要か?

Filed under: 1.診断の重要性について — mukai @ 14:43:30

医者に行けば薬が出ると思っている人が多い。

本当に薬が必要か?

薬の必要のない、よくあるパターン 2種

1)老年の不眠

高齢のかたが、「寝れない」、という時には、簡単な質問、「何時に寝て何時に起きますか?」と必ず聞く。

お年寄りの不眠でよくあるのは、「寝れない」というので、よく話を聞いてみると、宵の口何もすることがない、TVも面白くないので、8時から寝る。すると3〜4時に目がさめてしまう、朝早くに目が覚めて困る、早く起きても何もすることがないので薬でもっと寝ていたい。

この人たちには、良〜く、説明した上で、すまんけど、もうチョット遅くまで起きていていただくようお願いする。または早く起きるのは当然と考えるべきであると説明する。

高齢の方に睡眠薬を変に出すと、ふらついて転倒したり、せん妄を起こしたりする。目上の方が多くて、なかなかお願いしにくい場合が多い。

2)アルコールの不眠

お酒を飲むと、大抵は眠りが浅いので、早く起きてしまう。これはアルコールの作用であるので、お酒を飲んだら、眠りが浅い、早く目がさめるのは当然と考えるべきである。多いのは中年のサラリーマンさん、眠りが浅く早く目が覚めてしまう。よーく、聞くと、かなりの深酒、すると眠りが浅い、早く目がさめる。

この人たちには、お酒を飲んだら眠りが浅く、早く起きるのは当然と考えるべきであると説明する。

3日でいいからお酒を止めてみることを提案する。1〜2日ではあまりにわからないが3日禁酒すると、熟眠できることが実感できる。

大抵は抗議の感情を込めて「エーエーッ」大声で反応する人が多い、酒飲みは、なかなか言うこと聞いてくれない。私もその一人。

ある患者さん、やっとこさ、説得に応じてくれた。

「1〜2日では分からなかったが、3日したらわかりました、頭がスーッと進むし、体が軽い、俺、天才ちゃうかな、と思いました!」だそうです。

こういう説明と説得は、ハイハイと薬を処方するより手間暇かかる、また嫌がられることがあるので、要注意です。

2015/1/7 水曜日

薬を飲んでいないのに薬がなくなる話

Filed under: 1.診断の重要性について — mukai @ 18:30:40

不安障害、パニック障害の方々、次第に症状が軽快してくると、クリニックを卒業しましょうということになる。

不安なときの服用するお薬も、減量を開始、毎日しっかり服用から→ 時々忘れる→ 時々飲む→ ついで「と〜きど〜飲む」へと変わってくる。

「お守り代わりです」と言いながら、10回分程度のお薬で、半年〜1年を長持ち、でもやっぱりお薬が手元にないと、心配で来院する。

いつでも服用できるよう、ポケットにでも入れておいてください。いつでも服用できる、という安心感があると、かえって服用しないですむ。 ポケットや財布にお薬を入れていると、プチプチに入っていても、種々の圧力がかかったり、擦れたりして、粉々になってしまう。

結局飲まない間に粉になって飲めなくなる。

実質、薬をなまないのになくなってしまうのである。

2014/12/19 金曜日

指きり!

Filed under: 1.診断の重要性について — mukai @ 10:38:48

約束!約束!

患者さんとよく指切りをする。

心配、心配。

「死んでやる!」、「薬を飲まない!」、「薬をたくさん飲んでやる!」などなど心配せてくれることばかり、言う。

そこで約束!約束!

「ごめん、余計なお世話かも知れんが、僕にも君を心配するぞ~~~!」  約束やで!

指切り!

診察室には、「心配をさせてくれる人」が多い。

2014/4/23 水曜日

商社マンの憂鬱

Filed under: 1.診断の重要性について — mukai @ 13:34:45

彼は生粋の商社マンなのである。いつの間にか外国語大学を卒業、何も考えない間に商社に入社、入社以来、ズズズウウウ~と海外勤務が続いた。最初はアメリカ合衆国、アフリカ、インド、南米・・・・もう何年も海外勤務、外国暮らしのほうが長くなってしまった。怖い所も、やばいところもいっぱい行ってきた。炎熱商人なんて小説があったっけ。

 

商社マンとしての手腕???それは、それはみんなに一目置かれる。そんなこんなで本社勤務を命じられた。

そんな彼がなんと、会社に行こうとすると、不安で、不安で、息苦しい、アアアー苦しい、アアアーしんどい。世界中でも怖いところ、やばいところもいっぱい経験してきた彼が、である。本社勤務が不安なのである。

そこで当院にやってきた。聞けばどうも、派閥あり、狭い空間、狭い人間関係、ゴチャゴチャした人間関係あり。しんどいね、宮仕え。

広い世界相手に飛び回ってきたのに・・・息苦しいな~~~。

 

そんなこんなで、彼の希望も聞いて、海外出張を増やしてもらえるよう会社と相談することにした。会社としては「うつ」の人をいくら本人の希望といえ海外出張に出すのも心配という。モットもな心配。

そこで奥様の登場、なかなか家庭的な会社で奥様がお願いすると、それではやってみましょうとOKがでた。良い会社です。

 

なんとなんと!生き生きした彼に戻り始めた。インド、アフリカの田舎のほう行きましたね。危険ないですかね、言いだしっぺの私も少し心配です。

ところがところが、当の彼、月に1度の海外出張すっきりしますね~~~息を吹き返しました。結局、以後定期的に海外出張することで元気取り戻しました。今は、狭い日本、狭い派閥もなんのその。当院は卒業よかったですね。

日本のためにもがんばってよ~!

私の部屋には、彼から頂いた「ガネーシャ:インドの知恵の神様」が私を見守っていてくれている。ガハハと笑うのがよく似合う人です。

2013/9/13 金曜日

お医者さん呼ぼう!子育てに自信をなくしているお父さんお母さんへ

Filed under: 1.診断の重要性について — mukai @ 10:28:17

未成年の診察についてのお話。自信をなくしている親御さんたちに私がよくするお話である。

昔、昔、私の息子が生後7~8ヶ月の頃、私も妻も研修医の時代の話である。私と異なり、私の妻は非常に優秀な内科医であった。 私は、アイスクリームを食べていた、あんまりおいしいので、息子にも一口と思い、スプーン一口なめさせた、ナナ・・・なんと息子が真っ赤になり始めた、蕁麻疹である「エライコッチャ、ド・ド・ドウショウ、ドウショウ」動転した私は、あの優秀な内科医の奥さんに助けを求めた、「えらいコッチャド・ド・ドウショウ、ドウショウ」と私はウロウロするだけであった。なんと、あれだけ優秀な内科医の奥さんも 「ド・ド・ドウショウ、ドウショウ」「お医者さん、呼ばなあかん!!」と言い始め、仕方がないので同級生の小児科の先生に電話をした。 「15分待ってごらん、それで治まらなかったら、絶対何とかするから」と力強い一言をいただき。長い、長い15分をわれわれ夫婦二人は耐えた。

ナナなんと、同級生の小児科の先生の言うとおり、スウウ~と蕁麻疹は引いていった。

以来私はこの同級生を尊敬してしまうのである。

「そうなんですよ、自分の蕁麻疹ならこんなものと、待てますが、自分の子供、身内は動転するのですよ、だからお母さん、お父さん一度落ち着きましょうか」と、言うことにしている。

たいていの親御さんたちは、この話をお聞きになると、大笑いして、話がすすみ治療がすすみやすくなる。

2013/2/16 土曜日

思い出し凹み:おもいだしへこみ

Filed under: 1.診断の重要性について — mukai @ 14:31:03

 うまい表現である。

「思い出し笑い」に引っ掛けて、ある患者さんが言っていたことば、言いえてミョウである。

昔あったチョッとしたことがフッと心に浮かんできては、落ち込んで気分が凹む、「うつ」の人たちがよく経験する体験である。この「思い出し凹み」他の患者さんに話してみたら、説明なしに「ああそうです、その通りです」という。

たしか難しい言葉で言うならよく似た言葉に,「病的後悔」 というのがあった。うつ病の人たちの特徴的な症状、昔のことを思い出しては、「あんなこと、せんといたらよかったのに、こうしておいたらよかったのに・・・・・」どうにもならない過去のこと、そんな後悔ばかりが心に浮かんでくる。アアアーと心から振り払う。心の隙間に入り込んでくる。ある有名な先生が言っていた「過去の肥大」ってこんなことを言うのかな、うるおぼえです。


このブログお読みの方でも、その通りまったく「思い出し凹み」うまいなと多いのではないだろうか?

2012/6/1 金曜日

プロの生演奏:今度はバイオリン!!

よし子さんはプロのヴァイオリニストである。私はその方に疎いのであるが、有名な方らしい。そんな人がある日、突然、人前でヴァイオリンを奏でようとした途端、手が震えて弦が震えるようになってしまった。何とか無理に抑えようとすればするほど、手の震えはひどくなり、当然弦は震え美しい音が出ない。困り果てて当院にお見えになった。

 

症状を訊けば訊くほど、いつもの「逆説志向」の適応のある方である。

 

 

そこで、いつものごとく診察室で演奏の練習、初日は楽器を持参されなかったので、とにかく、弦に似た長い棒を引く練習をしてもらった。

 

やっぱり!! 震えないね~~~!

 

ご本人述「アッレ~ おかしいですね~、震えませんね~」心配ならば服用する程度のお薬を処方した。

 

宿題として「震える演奏」を練習してくることにして、次回は実際の楽器を持参して当院で「震える演奏」をして頂くことにした。

 

1週間後実際の生演奏、すごいね~ 素晴らしいね~ 音痴の私が感心した、たったこんな小さな楽器なのに、こんなに大きな音で、なんて深いコクのある音なんだろう、と感動している私をよそに、彼女の手は全く震えず治療は完了した。

 

お薬は使用しなかったとのことであった。困れば来院して頂くことで当院を卒業いただいた。

 

 

プロの渾身の生演奏を聞かせていただいた。生演奏は一回で終了、治療も終了、もう、一回くらい聞かせてほしいな~と思うのであります。

 

 

たまには役得というものであります。いいなあ~ヴァイオリン

「友白髪の会」

「あっれ~~こんなとこ、白髪生えてる、ヒャーヒャーホホーッホホーッ」とおどける彼の声を聞きながら何となく複雑であった。この人、仕事しているとき、あんな難しい顔してるのに、こんな楽しそうな声もだすんだ。

 

白髪といっても「白毛」がただしいだろう。彼が見つけなければ、一生、誰にも、自分にさえも見つからなかったであろう「白い毛」。

 

もうそんな歳になってまったのか。子供を育てることに一生懸命、母であることに、がんばってきた。「女」であることを一歩引いて。

 

もうすぐ子供たちも独立、なんか「人生って不条理」だと思う。

 

 

「友白髪の会」やね、ガハハと、彼は笑う。彼も自分と同じ年頃に、同所にやっぱり「白い毛」を見つけたという。

 

抜いてやろうと思ったら大変痛かった、やっぱり切ることにした、鏡にうつして、キャ~ 変な格好やわ~、子供に見せられ変わ!切りにくいな~~。

 

 

彼がつぶやく斉藤茂吉の歌、

 

ミュンヘンにわが居りしとき 夜ふけて陰(ほと)の白毛を切りて棄てにき

 

いきどほり 遣(や)らはむとする方(かた)しらず 白くなりたる鼻毛 おのれ抜く

 

(斉藤茂吉)

 

 

「茂吉さん、きっと、この毛、抜いてやろうとひっぱたら、痛くて腹立って、鼻毛ぬいたんやワ、そしたら、また、痛かって、腹立ったんやわ~~ それで切ることにしたんやわ。」

 

「なんや、こんなことわかる歳になってしもたな~~、なんか腹立つわ、見つけんでもええのに!」次ぎに逢ったら、たくさんごちそうしてもらおおう~っと。

 

当然ご本人の了解はいただいているが、本人が特定できない程度に変更してある。

 

 

2011/11/3 木曜日

昔々その昔おじいさんとおばあさんがありました。

Filed under: 1.診断の重要性について — mukai @ 13:55:41

昔々、その昔、おじいさんとおばあさんがありました。おじいさんはチョットおからだがご不自由で、おばあさんはチョット物忘れがありました。
ある時、おじいさんは山に芝刈りに行こうとしましたが息切れがするので、芝刈りはやめてしまいました。おばあさんは川に洗濯に行くのですが、どんぶらこ~、どんぶらこ~洗濯物を川に流してしまったり、そのままおいて忘れて帰ってきたりするので、川へ洗濯に行くのを止めていました。
あるとき、悲しいことに、おじいさんの息切れが、チョット悪くなってしまいました。そんなにたいへんに考えるほどでもないのですが、おじいさんは「もうあかんのや!もう駄目なんや」と、皆が大丈夫と説明しても、なかなか納得しませんでした。
 そんなある日、おじいさんは、物忘れのおばあさんを残して自分が先に逝ったらと心配で、心配でたまらなくなり、なんと!!「おばあさんの首を絞め、自分も死ぬのだ」と言い始めました。心配なので、仲の良いご夫婦だけど、仕方がないので、別々に生活するようになりました。おじいさんはおばあさんと離れて暮らしても、なお「心配や!心配や!」は続きました。
      夫の愛はなんと切ないものでしょう。
   一方で、おばあさんは、離れて暮らすようになって、おじいさんが心配した通り、物忘れはますますひどくなってきました。しばらくした頃、おばあさんもおじいさんが心配だろうから、お話をしようと、またどのくらい物忘れがあるか見てみようと、いろいろ聞いてみることにしました。
「よし子さん(おばあさんのこと)、おじいさんはどうしたはる?」と、お聞きしました。おばあさんは、「アーッ、アーッ、ソンナモン、知らん!知らん!それよりおやつ、おやつチョーダイ」との返事でした。
      妻の愛はなんと切ないものでしょう。
 男もいろいろ、女もいろいろ、夫婦の愛情も、いろいろ、男と女の愛情、切ないものです。

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